君と話が出来たら それだけで嬉しくなるんだ

桜が満開なのになんだか肌寒い日が続いている。
引っ越しまであと何日か、本当は大好きな自分の部屋もしくは桜並木の下でずっとのんびりしていたいけど、引っ越しの準備もそろそろ始めないとだ。

一人暮らしを始めてから通算しておよそ4年半。始める前はなかなか気が重かったのを覚えている。
家族のいるぬくぬくとした賑やかな場所から、一人で生活するなんて絶対に無理だと思ってた。
けど違った。元々、一人暮らしをしたらこんな部屋にしたいとか妄想するのは好きで、それが思い通りに叶えられ、理想の空間で過ごせるのは想像してたよりも幸せだった。目に入る空間が理想的なだけでこんなにも幸せを感じるのかと思った。
それが少なくともしばらくの間はなくなってしまうのが怖い。これからしばらく自分だけの空間はなくなってしまう。贅沢な感情なのは重々承知だけど正直な気持ちだ。
けど、今はそれよりも優先すべきものがある。

私は3月末で退職した。職場にいたのは丸3年。社会人になって2つ目の職場だ。1回目の転職は、突然かつ予想外過ぎる不可抗力で、今の職種を続けるには場所を変えざるを得ない状況だった。癖の強い人も多かったけどそんな人達もどこかしら尊敬でき、「ここでずっと働いても良いな」と思えていた中での突然のことだったので、お先真っ暗な気持ちで転職活動したのを覚えている。

そして今の職場。入社初日に部署のトップに「ここは大変だよ。去年沢山いた新人がみんな辞めたし、その前の年の子も1人しか残ってない。だから今人が足りなくて他の部署から一気に新しい人が来て、てんやわんやしてる時期。」的なことを面談室で言われ、絶望しながら帰り、家で泣きながら親に電話した。(今思うとめちゃくちゃ心配かけたんだろうなと思うけど、ちゃんと人を頼れて偉かったねという気持ち)
それを考えればよく3年も続けたなと我ながら思う。

そんな風にスタートしたけど、別にずっとしんどいわけではなかった。ていうか、ずっとしんどいなら絶対もっと前に辞めてた。
忙しくて責任も重くて嫌になることも多かったけど、とある業務の担当日以外は比較的心に余裕を持って働くことができたし、割と大所帯な組織なので、数名いる苦手な人とも週一回関わるかどうかというレベルで、基本的には良い人が多いのが救いだった。そして、ほぼほぼ定時で帰れるのも良かった。

それでも辞めようと思った。
こればかりは憶測でしかないし、気休めかもしれないけれど、色々と話を聞いていても良いタイミングだった気がする。

得られたものは沢山ある。
特に、入って2年目で取り組んだ研究は、大変だったけど、仕事だけでなく自分の人生にも影響を与えるようなもので、沢山考えたあの時間にも意味があったのかなと思う。
それ以外にも日々、いろんな人の人生の大切な節目に触れることで、そこでしか知れないことを沢山知り、学ぶことができた。
表向きには輝かしく見えていても、人間はみんな弱くて、色んな感情と戦いながら色んな選択を繰り返していることを知れた。
本当は、そういう人間の弱い瞬間にもっと寄り添いたかった。もう少し自分に余裕があれば、と思う瞬間が何度もあった。逆に、感謝の言葉を貰えたりした時はとても嬉しかった。

この気持ちはこれからも大切にしたいと思う。そういうちょっとした気持ちが原動力になってくれると信じたい。
「そこに必ず意味があるから」と信じたい。
ゆっくり、のんびり。